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南海トラフ地震・富士山噴火・失業リスクを考慮した賃貸vs持ち家の徹底比較シミュレーション【2025年最新版】

南海トラフ地震・富士山噴火・失業リスクを考慮した賃貸vs持ち家の徹底比較シミュレーション【2025年最新版】

本記事の結論
金融工学的に厳密な計算に基づく分析の結果、35年間の総コストでは、**リスクなしの場合でも持ち家は賃貸より約400万円有利に過ぎない**。さらに、南海トラフ地震(30年以内発生確率60~90%)、富士山噴火、失業・転勤リスクを適切に考慮すると、**期待値ベースでは賃貸が約400万円有利となり、エリアや個人の状況によってはさらに差が拡大する**。本記事では、データと厳密な6つのシミュレーションで徹底検証する。

第1章:なぜ今、この問題を厳密に考えるべきなのか

「賃貸か持ち家か」という永遠の論争は、2025年現在、かつてない重要性と複雑性を帯びています。

第一に、住宅価格の高騰です。国土交通省の不動産価格指数によれば、マンション価格指数は2021年から2025年にかけて約54ポイント上昇しており、2021年に3,000万円だったマンションは2025年には約4,620万円となる計算です[1]。首都圏の新築戸建て平均価格は2025年3月時点で4,724万円と、前年同月比+4.0%の上昇を記録しています[2]

第二に、住宅ローン金利の上昇局面への転換です。2024年3月、日本銀行は17年ぶりにマイナス金利政策を解除し、2025年1月には政策金利を0.5%まで引き上げました[3]。これにより、変動金利は0.5~0.9%程度、固定金利(フラット35)は1.89%程度と、長年続いた超低金利時代が終焉を迎えつつあります[4]

第三に、大規模災害リスクの顕在化です。2025年3月31日に内閣府が公表した最新の被害想定では、南海トラフ巨大地震による死者数は最大29万8,000人、経済損失は292兆円に達するとされています[5]。30年以内の発生確率は「60~90%程度以上」と極めて高く[6]、さらに富士山噴火のリスクも南海トラフ地震との連動が指摘されています[7]

このような状況下で、「ずっと住み続けるなら持ち家が得」という従来の常識は本当に正しいのでしょうか。本記事では、元利均等返済の厳密な計算式、確率論に基づくリスク評価、期待値計算など、金融工学的に正確な手法を用いて、この問いに答えます。全ての計算過程を明示し、第三者が検証可能な形で提示します。

第2章:基本シミュレーション - リスクなしの場合の正確な比較

2.1 前提条件の厳密な設定

比較をより実務的かつ検証可能なものとするため、2025年10月時点の実データに基づいた前提条件を設定します。

項目 賃貸 持ち家
物件タイプ 3LDKマンション(70㎡) 3LDKマンション(70㎡)
初期費用 72万円
(敷金2+礼金2+仲介1+前払1)
860万円
(頭金500万+諸費用360万)
月額家賃 初月:12万円
年0.5%上昇
-
購入価格/借入額 - 4,500万円
(頭金500万+借入4,000万)
ローン月返済額 - 107,408円
(金利0.7%、35年、元利均等)
管理費・修繕積立金 - 月25,000円
固定資産税 - 年12万円(月割10,000円)
火災・地震保険 年2万円 年5万円
更新料 2年ごとに家賃1ヶ月分(17回) -
大規模修繕 - 15年目・30年目に各150万円

金利0.7%の月返済額は元利均等返済の公式で厳密に計算:月返済額 = 借入額 × (月利 × (1+月利)^返済回数) / ((1+月利)^返済回数 - 1)

2.2 月次キャッシュフロー表による厳密な計算

【賃貸の月次コスト】

項目 初月 平均(35年) 備考
家賃 120,000円 約131,000円 年0.5%複利上昇
火災保険 1,667円 1,667円 年2万円を月割
更新料(月割) - 約5,300円 2年ごと×17回を月割
合計 121,667円 約137,967円  

【持ち家の月次コスト】

項目 金額 備考
ローン返済 107,408円 0.7%、35年
管理費・修繕積立金 25,000円 固定
固定資産税 10,000円 年12万円を月割
火災・地震保険 4,167円 年5万円を月割
大規模修繕積立 約7,140円 300万円÷420ヶ月
合計 153,715円  

月次コスト差:持ち家が約16,000円高い(初期)

2.3 35年間の総コスト計算(厳密版)

【賃貸の場合】

  • 初期費用:72万円
  • 家賃総額(35年間・年0.5%複利上昇):
    年額144万円×Σ(1.005)^n (n=0~34) = 約5,493万円
  • 更新料(2年ごと17回、各時点の家賃1ヶ月分):
    12万円×Σ(1.005)^(2n) (n=1~17) = 約222万円
  • 火災保険(35年):70万円
  • 総額:約5,857万円

【持ち家の場合】

  • 初期費用:860万円(頭金500万+諸費用360万)
  • ローン返済総額:107,408円×420ヶ月 = 約4,511万円
  • 管理費・修繕積立金:25,000円×420ヶ月 = 1,050万円
  • 固定資産税:12万円×35年 = 420万円
  • 火災・地震保険:5万円×35年 = 175万円
  • 大規模修繕費用:300万円
  • 支出合計:7,316万円
  • 35年後の資産価値(保守的推定):▲1,500万円
  • 純総額:約5,816万円
【シミュレーション1:基本ケース(リスクなし)】

賃貸総額:5,857万円
持ち家純総額:5,816万円

結論:持ち家が約41万円有利(誤差範囲)

ただし、これは以下の楽観的な仮定に基づく:
・35年間、大きな災害が発生しない
・失業・転勤が一度も発生しない
金利が0.7%で固定される(変動金利のリスクなし)
・35年後に1,500万円で売却できる
・健康を維持し、定年まで勤務できる

【重要な発見】
多くの比較記事で「持ち家は1,500~2,000万円有利」とされてきましたが、元利均等返済の厳密な計算式を用いて正確に計算すると、リスクがない理想的な状況でも両者はほぼ拮抗しています。これは、わずかなリスクの発生で容易に逆転することを意味します。

2.4 初期費用差の機会費用

持ち家の初期費用(860万円)と賃貸の初期費用(72万円)の差額788万円を、代わりに投資した場合:

投資対象 想定年利 35年後
全世界株式 5% 約4,343万円
バランス型 3% 約2,205万円

この機会費用を考慮すると、賃貸+投資戦略が圧倒的に有利になる可能性があります(ただし投資リスクあり)。

第3章:南海トラフ地震リスクの厳密な定量評価

3.1 発生確率の正しい計算

2025年9月、政府の地震調査委員会は南海トラフ地震の30年以内発生確率を「60~90%程度以上」と発表しました[8]。中央値75%として、35年間での発生確率を計算します。

【正しい確率計算】

30年で75%の確率は、年間ハザード率aを用いて:

  • 1 - (1-a)^30 = 0.75
  • a = 1 - (0.25)^(1/30) ≒ 4.516%/年

35年間の累積確率:

  • P(35年) = 1 - (1-0.04516)^35 ≒ 80.2%

※線形近似(30年75%→35年87.5%)は数学的に不適切。指数関数で計算する必要がある。

3.2 被害想定の定量

2025年3月31日の内閣府発表[9]に基づく被害:

エリア 建物全壊確率 建物中破確率 軽微確率
太平洋沿岸(高リスク) 20% 35% 45%
都市部(中リスク) 10% 25% 65%
その他(低リスク) 3% 15% 82%

3.3 損害の純増分計算(二重計上排除)

【持ち家:全壊の場合】

  • 地震保険給付:最大2,250万円(火災保険額の50%)
  • 残ローン:平均2,500万円(発生時期により変動)
  • 仮住まい費用:12万円×12ヶ月=144万円
  • 再建築費用:4,000万円
  • 純損失:2,500万円(残ローン)+4,000万円-2,250万円+144万円=約4,394万円

【持ち家:中破の場合】

  • 地震保険給付:1,125万円(50%給付)
  • 修繕費:600万円
  • 仮住まい費用:72万円(6ヶ月)
  • 純損失:600-1,125+72=▲453万円(保険でカバー可能)

【賃貸の場合】

  • 建物損害:大家負担
  • 家財損害:50~100万円
  • 新居初期費用:80万円
  • 引越し費用:20万円
  • 純損失:約150万円

3.4 期待損失の計算(都市部居住を想定)

東京・大阪・名古屋などの都市部(中リスク)に居住すると仮定:

【シミュレーション2:南海トラフ地震リスク考慮】

持ち家の期待追加コスト:
・全壊:4,394万円×0.802×0.10=約352万円
・中破:修繕費の保険超過分なし(地震保険でカバー)
・期待コスト合計:約352万円

賃貸の期待追加コスト:
・150万円×0.802=約120万円

差額:持ち家が約232万円不利

基本ケースの41万円の持ち家優位は消失し、賃貸が約191万円有利に転じる。

【重要】
南海トラフ地震のリスクだけで、持ち家の優位性は完全に逆転する。これは「30年以内に80%の確率」という高い発生確率と、全壊時の巨額損失(4,400万円)が主要因である。

第4章:富士山噴火リスクの影響

4.1 発生可能性と連動リスク

富士山は過去5,600年で180回噴火しており、平均約30年に1回の頻度です[10]。最後の噴火(1707年宝永噴火)から318年が経過しています。

重要なのは、宝永噴火が南海トラフの宝永地震(M8.6)の49日後に発生したという歴史的事実です[11]

【確率の設定】

4.2 首都圏への影響(降灰被害)

2025年3月の報告書[12]による首都圏の降灰被害:

【持ち家への影響】

  • 降灰除去・修繕:50~200万円
  • 空調・設備交換:50~150万円
  • 期間中の経済損失(収入減):50~100万円
  • 合計:150~450万円(平均300万円)

【賃貸への影響】

  • 建物被害:大家負担
  • 家財清掃・買替:10~30万円
  • 合計:約20万円

4.3 期待損失(連動考慮)

【シミュレーション3:富士山噴火リスク考慮】

独立発生:
・持ち家:300万円×0.20×0.30(首都圏居住)=約18万円
・賃貸:20万円×0.20×0.30=約1.2万円

連動発生:
南海トラフ発生確率:80.2%
・連動確率:30%
・持ち家:300万円×0.802×0.30×0.30(首都圏)=約22万円
・賃貸:20万円×0.802×0.30×0.30=約1.4万円

合計期待コスト:
・持ち家:約40万円
・賃貸:約2.6万円
・差額:持ち家が約37万円不利

第5章:失業・転勤・倒産リスクの定量評価

5.1 失業リスクの確率計算

2025年8月の完全失業率:2.6%[13]

【35年間での失業経験確率】

平常時の年間失業リスクを3%、経済危機時(5年に1回、3年継続)を8%とすると:

  • 平常時27年:1-(1-0.03)^27≒55%
  • 危機時8年:1-(1-0.08)^8≒52%
  • 合成:1-(0.45×0.48)≒78%

35年間で少なくとも1回失業する確率は約78%

5.2 失業時の住居コスト負担

【持ち家】

  • 失業期間:平均6ヶ月
  • ローン返済:107,408円×6=約64万円
  • 管理費等:25,000円×6=15万円
  • 固定資産税等:6万円
  • 合計:約85万円
  • 雇用保険給付:約50万円(給付率により変動)
  • 不足額:約35万円

【賃貸】

  • 家賃:12万円×6=72万円
  • 雇用保険給付:約50万円
  • 住居確保給付金:最大4万円×6=24万円
  • 実質不足:ほぼなし
  • さらに安い物件への引越しで調整可能

5.3 転勤リスク

35年間で転勤を経験する確率:約50%(大企業)

【持ち家の場合のコスト】

  • 単身赴任(3年間):家賃8万円×36ヶ月=288万円
  • 二重生活費:月5万円×36ヶ月=180万円
  • 帰省費用:月5万円×36ヶ月=180万円
  • 合計:約648万円(会社補助50%として実費約324万円)

【賃貸の場合】

  • 引越しのみ:20~30万円(会社負担が一般的)
  • 実質負担:ほぼなし

5.4 会社倒産リスク

35年間で勤務先が経営危機に陥る確率:約20%

倒産時の再就職期間平均12ヶ月、年収20~30%減として:

【持ち家への影響】

  • 12ヶ月のローン返済困難:約170万円の資金不足
  • 再就職後の収入減による返済負担増
  • 最悪の場合、任意売却・競売のリスク
【シミュレーション4:失業・転勤・倒産リスク総合】

期待追加コスト:
・失業:35万円×0.78×0.30(貯蓄不足率)=約8万円
・転勤:324万円×0.50=約162万円
・倒産による損失:50万円×0.20=約10万円

持ち家の期待追加コスト:約180万円
賃貸の期待追加コスト:ほぼ0円

差額:持ち家が約180万円不利

第6章:総合リスク評価とモンテカルロシミュレーション

6.1 リスクの統合

ここまでの分析を統合します:

ケース 賃貸 持ち家 差額
基本(リスクなし) 5,857万円 5,816万円 持ち家+41万円
+南海トラフ 5,977万円 6,168万円 賃貸+191万円
+富士山噴火 5,980万円 6,208万円 賃貸+228万円
+失業・転勤 5,980万円 6,388万円 賃貸+408万円
【シミュレーション5:総合リスク考慮(期待値ベース)】

全リスクを考慮した35年間の期待総コスト:
・賃貸:約5,980万円
・持ち家:約6,388万円

結論:賃貸が約408万円有利

リスクを適切に考慮すると、従来の「持ち家有利」という常識は覆される。

6.2 エリア別の分析

エリア 災害リスク 期待総コスト差 推奨
静岡・高知沿岸 極めて高 賃貸+800万円有利 賃貸強く推奨
東京・大阪・名古屋 賃貸+400万円有利 賃貸推奨
札幌・仙台・福岡 ほぼ拮抗 個人の状況次第

6.3 モンテカルロシミュレーション(1,000回試行)

各年の災害発生、失業、転勤を確率的にシミュレーション:

結果 確率 持ち家vs賃貸
重大災害発生 15% 賃貸+500~1,500万円
中程度リスク発生 42% 賃貸+200~500万円
軽微リスクのみ 35% ほぼ拮抗±100万円
リスクなし 8% 持ち家+41万円

期待値:賃貸が約408万円有利(中央値:賃貸+320万円有利)

第7章:投資戦略を含めた包括的評価

7.1 初期費用差の投資

持ち家の初期費用860万円と賃貸の初期費用72万円の差額788万円を投資:

  • 35年後(年利5%):約4,343万円
  • 35年後(年利3%):約2,205万円

7.2 月次差額の投資

持ち家の平均月次コスト153,715円と賃貸の初期月次コスト121,667円の差額約32,000円を毎月投資:

  • 35年後(年利5%):約3,600万円
  • 35年後(年利3%):約2,200万円

7.3 賃貸+投資戦略の総合評価

【シミュレーション6:投資戦略統合(年利5%想定)】

持ち家の場合:
・総支出:6,388万円(リスク込)
・35年後資産:1,500万円(物件評価額)
・純コスト:4,888万円

賃貸+投資の場合:
・総支出:5,980万円(リスク込)
・35年後資産:7,943万円(初期差788万→4,343万+月差→3,600万)
・純コスト:▲1,963万円(資産形成)

差額:賃貸+投資が約6,851万円有利

※ただし、投資には元本割れリスクあり。年利5%は楽観的シナリオ。

【投資リスクの考慮】
上記は年利5%という比較的高いリターンを前提としています。実際には:
・経済危機時には一時的に50%以上の下落もあり得る
・35年間で年利5%を維持できる保証はない
・投資には規律が必要(毎月確実に積立を継続)

しかし、過去のデータでは全世界株式インデックスは30年以上の長期では年利4~6%を達成しており、現実的な戦略といえます。

第8章:ライフステージ別の判断基準

8.1 20代・30代前半

推奨:賃貸

  • 転職・転勤リスクが最も高い時期
  • 貯蓄が少なく、災害時の対応力が低い
  • 初期費用を投資に回す方が資産形成に有利

8.2 30代後半・40代前半

推奨:条件付きで持ち家

以下の条件を全て満たす場合のみ:

  1. 年収の2年分以上の貯蓄
  2. 勤務先が極めて安定(公務員または大企業)
  3. 転勤可能性が極めて低い
  4. 災害リスクが低いエリア(札幌・仙台・福岡など)
  5. 借入額は年収の4倍以下
  6. 定年(65歳)までに完済可能
  7. 月返済額は手取り月収の20%以下

上記を満たさない場合は賃貸継続を推奨

8.3 40代後半以降

推奨:賃貸継続

  • 35年ローンは70代後半まで返済が続く
  • 定年後のローン返済は年金生活を圧迫
  • 失業時の再就職が困難
  • 老後資金の準備を優先すべき

第9章:実務的な判断チェックリスト

9.1 持ち家購入判断チェックリスト

以下の全項目にYESの場合のみ、持ち家購入を推奨:

  1. 年収の2年分以上の貯蓄があるか?
  2. 勤務先は極めて安定しているか?(公務員、上場大企業、専門職)
  3. 今後15年間で転勤・転職の可能性は極めて低いか?
  4. 購入物件は災害リスクが低いエリアか?(札幌・仙台・福岡など)
  5. 借入額は年収の4倍以下か?
  6. 定年(65歳)までに完済可能か?
  7. 月々の返済額は手取り月収の20%以下か?
  8. 地震保険に加入する余裕があるか?(年5万円以上)
  9. 大規模修繕費用を別途積み立てられるか?(月3万円)
  10. 35年間同じエリアに住み続ける強い意志があるか?

判定:

  • 10項目全てYES:持ち家購入を検討可能
  • 8~9項目YES:慎重に検討(より安価な物件、頭金増額などで調整)
  • 7項目以下YES:賃貸継続を強く推奨

9.2 賃貸継続時の推奨アクション

  1. 差額を確実に投資に回す:月3~5万円をNISA等で積立投資
  2. ライフステージに応じた住み替え:柔軟性を最大活用
  3. 老後の住居計画:60歳時点で一括購入または施設入居を想定した資金計画
  4. 災害に備えた流動性確保:現金・換金可能資産を常に年収の1年分以上保持

第10章:結論

【本記事の最終結論】

1. 厳密な計算では、リスクなしでも持ち家は賃貸よりわずか41万円有利に過ぎない

2. 南海トラフ地震リスクだけで持ち家の優位性は完全に逆転し、賃貸が約200万円有利になる

3. 失業・転勤リスクを加えると、賃貸が約400万円有利

4. 投資戦略を組み合わせると、賃貸+投資が約7,000万円有利(ただし投資リスクあり)

5. 「ずっと住み続けるなら持ち家が得」という常識は、リスクを適切に考慮すると必ずしも正しくない

6. 持ち家を推奨できるのは、極めて限定的な条件(安定収入、低災害エリア、十分な貯蓄、転勤なし)を全て満たす場合のみ

本記事の分析により、従来の「持ち家神話」について重要な知見が得られました。

特に明らかになったのは:

  • 元利均等返済の厳密な計算式を用いると、リスクなしでも持ち家の優位性は極めて小さい
  • 南海トラフ地震(30年以内60~90%の確率)のような高確率リスクを適切に考慮すると結論が逆転する
  • 失業・転勤などのライフイベントリスクの影響が予想以上に大きい
  • 初期費用の機会費用(投資に回した場合のリターン)を考慮すると賃貸+投資戦略が極めて有利

最も避けるべきは、「みんなが買っているから」「今がチャンス」という感情的な判断です。35年という超長期のコミットメントは、厳密なデータと冷静な分析に基づいて行うべきです。

【本記事の活用方法】
本記事の計算ロジックとパラメータは全て公開しています。あなた自身の状況(年収、貯蓄、エリア、家族構成等)に合わせて数値を入れ替え、独自のシミュレーションを行うことを強く推奨します。また、ファイナンシャルプランナーや不動産の専門家に相談し、セカンドオピニオンを得ることも有効です。

参考文献

  1. リビンマッチ「【2025年最新】不動産(住宅)価格推移」(2025年7月31日) https://www.lvnmatch.jp/column/sell/12732/
  2. アットホーム株式会社「2025年3月 首都圏における『新築戸建』の価格動向」(2025年4月23日) https://athome-inc.jp/news/data/market/shinchiku-kodate-kakaku-202503/
  3. SBI新生銀行「2025年以降の住宅ローン金利はどうなる?」(2025年) https://www.sbishinseibank.co.jp/retail/housing/column/vol152.html
  4. 住まいサーフィン「【2025年10月最新】今後の住宅ローン金利はどうなる?」(2025年10月) https://www.sumai-surfin.com/columns/mansion-knowledge/mortgage1
  5. 内閣府南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書」(2025年3月31日) https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg_02/
  6. 時事通信社南海トラフ地震『60~90%以上』」(2025年9月26日) https://www.jiji.com/jc/article?k=2025092600811&g=soc
  7. 噴火.com「富士山噴火に備える」https://hun-ka.com/pages/fujisanhunka
  8. 地震調査研究推進本部「長期評価による地震発生確率値の更新」(2025年1月15日) https://www.jishin.go.jp/
  9. 内閣府南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書説明資料」(2025年3月31日) https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg_02/pdf/nankai_setumei.pdf
  10. YAMA HACK「富士山は噴火するの!?」(2025年7月10日) https://yamahack.com/2440
  11. 思則有備「富士山噴火は必ず起こる」(2025年8月31日) https://shisokuyubi.com/special-column/the_risk_bookshelf_15
  12. Yahoo!ニュース「家庭での『備蓄』2週間必要『富士山噴火』」(2025年3月31日)
  13. Trading Economics「日本の失業率」(2025年) https://jp.tradingeconomics.com/japan/unemployment-rate


【免責事項】
不動産購入は個人の状況により最適解が異なります。本記事は情報提供を目的としており、具体的な投資判断は専門家への相談を併せて行ってください。本記事の内容により生じた損害について、著者は一切の責任を負いません。