
財務諸表分析指標エクスプローラー
ビジネス会計検定試験(1級・2級)に対応した財務分析指標を検索・閲覧できます。分析目的や業種で絞り込み、指標名をクリックすると詳細が表示されます。
売上高総利益率(粗利率)
計算式
使い所・目的
商品やサービスの根本的な収益力を示します。企業の価格設定能力(ブランド力)や製造・仕入の効率性を直接的に反映します。
解釈上の注意点
高いほど付加価値の高い製品を扱っているか、原価管理に優れていることを意味します。業種による差が極めて大きく、同業他社との比較が重要です。低下傾向にある場合は、価格競争の激化や原材料費の高騰などが考えられます。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 約12% - 16% | 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 約27% - 29% | 中小企業実態基本調査 |
| 製造業 | 約21% - 25% | 中小企業実態基本調査 |
| 宿泊・飲食サービス業 | 約56% | 中小企業実態基本調査 |
| 情報通信業 | 50% - 70% | 業界データ |
計算式
使い所・目的
企業が「本業」でどれだけ稼いでいるかを示す最も重要な収益性指標の一つです。企業の核となる事業活動の収益性を純粋に評価できます。
解釈上の注意点
企業の真の実力を測る鏡です。総利益率が高いのに営業利益率が低い場合、販管費(人件費、広告費など)が収益を圧迫している可能性を示唆します。同業他社比較が有効です。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 建設業 | 約4.3% | ビジョン税理士法人 |
| 製造業 | 約4.5% | ビジョン税理士法人 |
| 情報通信業 | 約5.9% | ビジョン税理士法人 |
| 運輸業・郵便業 | 約3.1% | ビジョン税理士法人 |
| 卸売業 | 約2.1% | ビジョン税理士法人 |
| 小売業 | 約1.5% | ビジョン税理士法人 |
| 不動産業 | 約9.0% | ビジョン税理士法人 |
| 宿泊・飲食サービス業 | 約2.6% | ビジョン税理士法人 |
計算式
使い所・目的
本業の儲けに、受取利息や支払利息などの財務活動を加味した、企業の経常的な活動全体での収益力を示します。
解釈上の注意点
営業利益率との比較が重要です。経常利益率が営業利益率より低い場合、借入金の金利負担が重い可能性があります。逆に高い場合は、財務活動がうまくいっているか、本業不振を資産運用でカバーしている可能性があります。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 建設業 | 約4.9% | 中小企業実態基本調査 |
| 製造業 | 約4.5% | 中小企業実態基本調査 |
| 情報通信業 | 約5.9% | 中小企業実態基本調査 |
| 卸売業 | 約2.1% | 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 約1.5% | 中小企業実態基本調査 |
計算式
※ビジネス会計検定では、支払利息控除前の「事業利益(営業利益+金融収益)」を用いることが多いです。
使い所・目的
企業が保有する全ての資産をどれだけ効率的に活用して利益を生み出したかを示す総合的な指標です。経営者が自社の事業運営の効率性を評価する際に重視されます。
解釈上の注意点
高いほど資産を効率的に使って稼いでいることを意味します。ただし、設備投資が多い製造業などでは低く、資産が少ないITサービス業などでは高くなる傾向があり、異業種比較には向きません。
業種別目安 (総資本経常利益率)
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 建設業 | 約5.7% | 中小企業実態基本調査 |
| 製造業 | 約4.9% | 中小企業実態基本調査 |
| 情報通信業 | 約5.8% | 中小企業実態基本調査 |
| 卸売業 | 約3.7% | 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 約3.9% | 中小企業実態基本調査 |
計算式
使い所・目的
株主が出資した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけの利益を上げたかを示す指標。「株主の立場から見た投資利回り」であり、投資家が最も重視する指標の一つです。
解釈上の注意点
一般的に10%以上が優良とされますが、高さだけで判断するのは危険です。デュポン分解を用いて「収益性」「効率性」「財務レバレッジ」のいずれが要因か分析することが重要です。ROAが低いのに財務レバレッジ(負債)でROEを高く見せている企業は、財務リスクが高い可能性があります。
デュポン・システム
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 建設業 | 約13.7% | 中小企業実態基本調査 |
| 製造業 | 約9.6% | 中小企業実態基本調査 |
| 情報通信業 | 約10.3% | 中小企業実態基本調査 |
| 卸売業 | 約11.0% | 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 約8.0% | 中小企業実態基本調査 |
計算式
使い所・目的
短期的な支払能力を測る最も一般的な指標。1年以内に支払うべき負債を、1年以内に現金化できる資産でどれだけカバーできるかを示します。
解釈上の注意点
100%超が必須で、150%以上が望ましいとされます。ただし業種により異なり、現金商売の小売業では低め、在庫の多い製造業では高めに出る傾向があります。高すぎる場合は、売れない在庫や非効率な資産を抱えている可能性も示唆します。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 建設業 | 約200% | 業界データ |
| 製造業 | 約185% - 199% | 業界データ |
| 情報通信業 | 約245% | 業界データ |
| 卸売業 | 約158% - 173% | 業界データ |
| 小売業 | 約146% - 161% | 業界データ |
計算式
使い所・目的
総資本のうち、返済義務のない自己資本がどれくらいの割合を占めるかを示す、長期的な安定性を測る最も基本的な指標です。
解釈上の注意点
高いほど財務的に安定していることを意味します。一般的に30%以上で標準、40%以上で優良とされますが、設備投資の多い業種や成長期の企業では低くなる傾向があります。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 全業種平均 | 41.7% | 中小企業実態基本調査 |
| 建設業 | 42.6% | 中小企業実態基本調査 |
| 製造業 | 46.4% | 中小企業実態基本調査 |
| 情報通信業 | 54.9% | 中小企業実態基本調査 |
| 卸売業 | 38.7% | 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 35.1% | 中小企業実態基本調査 |
| 不動産業 | 36.3% | 中小企業実態基本調査 |
| 宿泊・飲食サービス業 | 16.2% | 中小企業実態基本調査 |
固定比率
計算式
使い所・目的
土地や建物などの長期的な固定資産が、返済不要の自己資本でどれだけ賄われているかを示します。設備投資の健全性を評価します。
解釈上の注意点
100%以下が理想とされ、その場合、すべての固定資産を自己資本だけで賄えていることになり、財務的に極めて安全です。ただし、この基準は非常に厳しく、多くの企業で100%を超えます。そのため、下記の「固定長期適合率」と合わせて見ることが重要です。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 情報通信業 | 65.9% | マネーフォワード クラウド |
| 建設業 | 79.8% | マネーフォワード クラウド |
| 製造業 | 99.1% | マネーフォワード クラウド |
| 卸売業 | 79.3% | マネーフォワード クラウド |
| 小売業 | 150.4% | マネーフォワード クラウド |
| 運輸業・郵便業 | 158.2% | マネーフォワード クラウド |
| 不動産業 | 162.1% | マネーフォワード クラウド |
| 宿泊・飲食サービス業 | 486.5% | マネーフォワード クラウド |
計算式
使い所・目的
固定資産の調達源として、自己資本に加えて返済期限が1年超の固定負債(長期借入金など)も含めて評価する、より現実的な指標です。
解釈上の注意点
100%以下であることが望ましいとされます。この比率が100%を超えている場合、長期資産の一部を短期の借入金で賄っていることを意味し、短期的な資金繰りが逼迫するリスク(借り換えリスク)が高い危険な状態を示唆します。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 情報通信業 | 46% | oneplat |
| 建設業 | 60% | oneplat |
| 卸売業 | 52% | oneplat |
| 小売業 | 67% | oneplat |
| 運輸業・郵便業 | 74% | oneplat |
| 不動産業 | 83% | oneplat |
| 宿泊・飲食サービス業 | 83% | oneplat |
負債比率 (D/Eレシオ)
計算式
使い所・目的
自己資本に対して負債がどれくらいの割合かを示す指標で、企業の財務レバレッジの度合いと長期的な支払能力を測ります。特に金融機関や格付機関が企業の信用力を評価する際に重視します。
解釈上の注意点
一般的に100%以下が望ましいとされますが、業種によって大きく異なります。安定したキャッシュフローを持つインフラ産業などでは2倍(200%)以上でも許容される場合があります。自己資本比率と合わせて見ることで、より多角的な財務リスク評価が可能になります。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 建設業 | 132% | M&Aベストパートナーズ |
| 製造業 | 125% | M&Aベストパートナーズ |
| 情報通信業 | 75% | M&Aベストパートナーズ |
| 運輸業 | 195% | M&Aベストパートナーズ |
| 卸売業 | 152% | M&Aベストパートナーズ |
| 小売業 | 172% | M&Aベストパートナーズ |
| 不動産業 | 184% | M&Aベストパートナーズ |
債務償還年数
計算式
※キャッシュフローは「営業利益+減価償却費」で簡易的に計算することもあります。
使い所・目的
企業が抱える有利子負債を、何年分のキャッシュフローで返済できるかを示す指標です。金融機関が融資の返済能力を評価する際に非常に重視します。
解釈上の注意点
一般的に10年以内が健全性の目安とされますが、業種や企業の成長段階によって異なります。15年を超えると危険水域と見なされることが多いです。インタレスト・カバレッジ・レシオが「フロー」の安全性を見るのに対し、こちらは「ストック」である負債全体の返済能力を評価します。
業種別目安
| 業種 | 目安値(年) | 出典 |
|---|---|---|
| 全業種平均 | 約9年 | TKC経営指標(BAST) |
| 建設業 | 約7年 | TKC経営指標(BAST) |
| 製造業 | 約8年 | TKC経営指標(BAST) |
| 情報通信業 | 約5年 | TKC経営指標(BAST) |
| 運輸業・郵便業 | 約11年 | TKC経営指標(BAST) |
| 卸売業 | 約8年 | TKC経営指標(BAST) |
| 小売業 | 約10年 | TKC経営指標(BAST) |
| 不動産業 | 約14年 | TKC経営指標(BAST) |
有利子負債依存率
計算式
使い所・目的
総資産のうち、返済義務と金利負担のある有利子負債(借入金、社債など)がどれくらいの割合を占めるかを示します。自己資本比率や負債比率を補完し、負債の「質」に着目した指標です。
解釈上の注意点
この比率が高いほど、金利上昇時の経営インパクトが大きくなり、財務の柔軟性が低いと評価されます。自己資本比率が同程度でも、無利子の負債(買掛金など)が多い企業と有利子負債が多い企業とでは、財務リスクが大きく異なります。一般的には30%以下が望ましいとされます。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 全業種 | 約30% | 各種業界調査 |
| 製造業 | 約28% | 各種業界調査 |
| 小売業 | 約35% | 各種業界調査 |
| 不動産業 | 約50% | 各種業界調査 |
計算式
使い所・目的
投下した総資本が、1年間で何回売上として回収されたかを示す、最も包括的な資産効率の指標です。デュポン・システムの重要な構成要素でもあります。
解釈上の注意点
業種による差が非常に大きいため、同業他社比較や時系列での変化を見ることが重要です。小売業や卸売業では高く、製造業や不動産業では低くなります。回転率の低下は、売上低迷や遊休資産の増加を示唆します。
業種別目安
| 業種 | 目安値(回) | 出典 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 約1.7 - 1.8 | 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 約1.8 - 2.0 | 中小企業実態基本調査 |
| 建設業 | 約1.3 | 中小企業実態基本調査 |
| 製造業 | 約1.0 | 中小企業実態基本調査 |
| 不動産業 | 約0.3 - 0.4 | 中小企業実態基本調査 |
計算式
使い所・目的
商品やサービスを販売してから、その代金が現金として回収されるまでに平均で何日かかるかを示します。企業の与信管理や代金回収プロセスの効率性を評価する上で不可欠です。キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の構成要素の一つです。
解釈上の注意点
期間が短いほど、資金繰りが良好であることを意味します。業界平均や過去のトレンドとの比較が重要です。期間が長期化している場合は、回収遅延や貸倒れリスクの増大を示唆している可能性があります。
業種別目安
| 業種 | 目安値(日) | 出典 |
|---|---|---|
| 建設業 | 約40 - 43日 | freee, 中小企業実態基本調査 |
| 製造業 | 約63日 | freee, 中小企業実態基本調査 |
| 情報通信業 | 約49 - 54日 | freee, 中小企業実態基本調査 |
| 卸売業 | 約56 - 57日 | freee, 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 約20 - 25日 | freee, 中小企業実態基本調査 |
| 不動産業 | 約31 - 34日 | freee, 中小企業実態基本調査 |
| 宿泊・飲食サービス業 | 約8 - 10日 | freee, 中小企業実態基本調査 |
計算式
使い所・目的
仕入れた在庫が販売されるまでに、平均で何日間倉庫に保管されているかを示します。在庫管理の効率性を測るための中心的な指標です。キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の構成要素の一つです。
解釈上の注意点
短いほど在庫が効率的に販売されていることを意味し、保管コストの削減や資金効率の向上に繋がります。ただし、短すぎると品切れによる機会損失のリスクも高まります。業種やビジネスモデルに応じた適正水準を見極めることが重要です。
業種別目安
| 業種 | 目安値(日) | 出典 |
|---|---|---|
| 製造業 | 約40 - 50日 | テスク, 財務省 |
| 卸売業 | 約20 - 23日 | テスク, 財務省 |
| 小売業 | 約25 - 29日 | テスク, 財務省 |
計算式
使い所・目的
原材料や商品を仕入れてから、その代金を支払うまでに平均で何日かかるかを示します。企業の支払い条件やサプライヤーとの交渉力を反映します。キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の構成要素の一つです。
解釈上の注意点
期間が長いほど、手元に現金を長く留めておくことができ、資金繰りが楽になります(運転資金の圧縮)。ただし、極端に長い場合は、サプライヤーとの関係悪化や信用の低下を招くリスクもあります。売上債権回転期間とのバランスを見ることが重要です。
業種別目安
| 業種 | 目安値(日) | 出典 |
|---|---|---|
| 全業種平均 | 約40日 | Money Forward, Paid |
| 製造業 (中小) | 約23日 | ジンジャー |
| 製造業 (大企業) | 約52日 | ジンジャー |
| 非製造業 (中小) | 約19日 | ジンジャー |
| 非製造業 (大企業) | 約41日 | ジンジャー |
キャッシュ・コンバージョン・サイクル (CCC)
計算式
使い所・目的
原材料の仕入れにお金を投じてから、それが最終的に現金として手元に戻ってくるまでの正味の日数を示します。運転資金が事業に拘束されている期間を表す、究極の効率性指標です。
解釈上の注意点
短いほど資金効率が良いことを意味します。「マイナスのCCC」は、顧客から代金を回収してから仕入先に支払うビジネスモデル(例: Amazon)であり、非常に強力な財務体質を示します。CCCの悪化は「黒字倒産」のリスクを高めます。
業種別目安 (中央値)
| 業種 | 目安値(日) | 出典 |
|---|---|---|
| 小売業 | -5.7 | Zaimani |
| サービス業 | 20.3 | Zaimani |
| 卸売業 | 34.5 | Zaimani |
| 建設業 | 65.9 | Zaimani |
| 製造業(化学) | 120.3 | Zaimani |
| 製造業(機械) | 149.6 | Zaimani |
計算式
※付加価値の計算には、売上高から外部購入価値を引く「控除法」と、経常利益や人件費などを足し上げる「加算法」があります。
使い所・目的
従業員一人当たりでどれだけ効率的に付加価値を生み出しているかを示す指標です。企業の人的資源の活用効率を測る上で中心的な役割を果たします。
解釈上の注意点
資本集約的な産業(製造業など)と労働集約的な産業(サービス業など)で水準が大きく異なります。絶対額よりも、同業他社比較や時系列での変化を見ることが重要です。
業種別目安(中小企業, 万円/人)
| 業種 | 目安値(万円/人) | 出典 |
|---|---|---|
| 製造業 | 約548万円 | 中小企業白書 |
| 情報通信業 | 約642万円 | 中小企業白書 |
| 卸売業 | 約747万円 | 中小企業白書 |
| 小売業 | 約460万円 | 中小企業白書 |
| 不動産業 | 約1,085万円 | 中小企業白書 |
| 宿泊・飲食サービス業 | 約299万円 | 中小企業白書 |
売上高増加率(増収率)
計算式
使い所・目的
企業の「トップライン」である売上高の成長ペースを示す、最も基本的で重要な成長性指標です。
解釈上の注意点
成長の「質」が問われます。大幅な値引きによる増収は、利益率を悪化させる可能性があります。必ず利益の増加率とセットで評価し、収益性を伴った健全な成長かを見極める必要があります。
業種別目安(中央値)
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 全業種 | 6.6% | Zaimani |
| 建設業 | 6.9% | Zaimani |
| 製造業 (機械) | 7.8% | Zaimani |
| 情報・通信業 | 8.9% | Zaimani |
| サービス業 | 8.0% | Zaimani |
| 小売業 | 6.7% | Zaimani |
| 不動産業 | 7.8% | Zaimani |
| 運輸業 (陸運) | 6.6% | Zaimani |
DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)
概念
企業が将来生み出すフリー・キャッシュフロー(FCF)を、リスクに見合った割引率(WACC)で現在価値に割り引くことで事業価値を算出する、最も理論的な評価手法です。
主要な計算要素
- フリー・キャッシュフロー (FCF): 企業が自由に使える現金のことで、税引後営業利益に減価償却費を足し、設備投資と運転資本増加額を引いて計算します。
- 割引率 (WACC): 加重平均資本コスト。株主資本コストと負債コストを資本構成に応じて加重平均したもので、事業のリスクを反映します。
- 継続価値 (Terminal Value): 予測期間以降に生み出すキャッシュフローの価値をまとめて計算したものです。
価値計算
EVA® (経済的付加価値)
EBITDA・EBITDA率
計算式
EBITDA率 (%) = (EBITDA / 売上高) × 100
使い所・目的
M&A、企業評価、国際比較で最も重視される指標。設備投資や会計基準の違いを排除し、純粋な事業の稼ぐ力を測定します。投資銀行、PEファンド、外資系企業では必須の指標です。
解釈上の注意点
現金流出を伴わない費用(減価償却)を除外するため、実際のキャッシュ創出能力により近い値を示します。ただし、設備更新の必要性は無視されるため、CapEx(設備投資)との比較も重要です。
業種別目安(EBITDAマージン)
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| ソフトウェア/ITサービス | 20% - 30% | 業界調査 |
| 医薬品・バイオ | 25% - 35% | 業界調査 |
| 製造業 | 10% - 15% | 業界調査 |
| 小売業 | 5% - 10% | 業界調査 |
| 通信 | 30% - 40% | 業界調査 |
正味運転資本 (Net Working Capital)
計算式
使い所・目的
売上変動に対する営業利益の感応度を測定します。事業計画策定、リスク管理、投資判断で極めて重要な指標です。固定費比率の高いビジネスモデルの収益性とリスクを評価できます。
業種別目安(中央値)
| 業種 | 目安値(倍) | 出典 |
|---|---|---|
| 全業種 | 4.1倍 | Zaimani |
| 建設業 | 2.6倍 | Zaimani |
| 製造業 (機械) | 3.3倍 | Zaimani |
| 情報・通信業 | 4.0倍 | Zaimani |
| サービス業 | 4.4倍 | Zaimani |
| 小売業 | 9.2倍 | Zaimani |
| 不動産業 | 2.4倍 | Zaimani |
計算式
使い所・目的
企業の利息支払能力を測定する、債権者にとって最重要の安全性指標。銀行融資の際のコベナンツ(財務制限条項)として頻繁に使用され、格付機関の信用格付にも直接影響します。
解釈上の注意点
2倍を下回ると危険水域、5倍以上で安全圏とされます。ただし業種や企業規模により基準は大きく異なります。
業種別目安(中央値)
※従業員規模により大きく変動するため参考値として記載
| 業種 (従業員50人以下) | 目安値(倍) | 出典 |
|---|---|---|
| 製造業 | 約1.8倍 | bizocean |
| 小売業 | 約1.7倍 | bizocean |
Altman Z-Score(倒産予測モデル)
計算式(上場企業版)
使い所・目的
エドワード・アルトマン教授が開発した、財務データを基に企業の倒産確率を予測する統計モデル。投資家、債権者、監査法人で広く使用される客観的リスク評価ツールです。
解釈上の注意点
3.0以上:安全圏(倒産リスク低)
1.8-3.0:グレーゾーン(要注意)
1.8未満:危険圏(高い倒産リスク)
製造業向けに開発されたため、サービス業や金融業への適用には限界があります。また、粉飾決算等の会計操作には対応できない点も注意が必要です。
ROIC(投下資本利益率)
計算式
投下資本 = 有利子負債 + 株主資本
NOPAT = 営業利益 × (1 - 実効税率)
使い所・目的
企業が事業に投下した全ての資本(負債・株主資本の合計)に対する税引後の収益率を示します。資本コスト(WACC)と比較することで、真の価値創造を評価できる最も重要な収益性指標です。
解釈上の注意点
ROIC > WACC であれば価値創造、ROIC < WACC であれば価値破壊を意味します。ROEと異なり、財務レバレッジの影響を除去するため、純粋な事業の収益性を評価できます。成長投資の意思決定では、ROIC水準が投資判断の最重要基準となります。
業種別ROIC水準
| 業種 | 優良企業ROIC | 業界平均ROIC |
|---|---|---|
| ソフトウェア・IT | 20-40% | 15-25% |
| 消費財・ブランド企業 | 15-25% | 10-15% |
| 製造業 | 10-15% | 6-10% |
| 公益・インフラ | 6-10% | 4-6% |
| 小売業 | 12-18% | 8-12% |
Rule of 40(ルール・オブ・40)
計算式
「40」の意味と由来
この「40」という数字は、厳密な理論から導かれたものではなく、米国のベンチャーキャピタル(VC)などが多くのSaaS企業を評価する中で培われた**「経験則に基づくベンチマーク」**です。成長率と利益率の合計が40%を超える企業は、事業の成長と収益性のバランスが取れており、持続的に価値を生み出す「健全な企業」と見なされます。
使い所・目的
SaaS・サブスクリプションビジネスにおいて、先行投資による赤字と高い成長率を両立させるビジネスモデルの健全性を評価する指標です。シリコンバレーのVCが投資判断で標準的に使用し、現在は上場SaaS企業の評価でも必須指標となっています。
解釈上の注意点
40%以上:優秀(成長と収益のバランス良好)
30-40%:良好(改善余地はあるが健全)
30%未満:要改善(成長鈍化と低収益の両方が問題)
成長段階別の目標値
| 成長段階 | 売上成長率 | 営業利益率 | Rule of 40 |
|---|---|---|---|
| アーリー成長期 | 80-100% | -40~-20% | 40-80% |
| ミッド成長期 | 40-60% | 0-10% | 40-70% |
| 成熟期 | 20-30% | 15-25% | 35-55% |
| 大手成熟企業 | 10-20% | 25-35% | 35-55% |
経営資本営業利益率
計算式
※経営資本 = 売上債権 + 棚卸資産 + 有形固定資産 + 無形固定資産
使い所・目的
企業が事業活動に直接投下している資本(経営資本)を使って、どれだけ効率的に本業の利益(営業利益)を生み出したかを示します。ROAよりも、より事業の実態に近い資本効率を測る指標です。
解釈上の注意点
ROAと同様に、高いほど効率的な経営が行われていることを示します。特に、本業と直接関係のない遊休資産や投資有価証券などを除外して計算するため、事業そのものの収益性をより純粋に評価できます。
業種別目安
ROA(総資本利益率)の目安が参考になります。一般的に5%を超えると優良とされますが、業種により大きく異なります。
| 業種 | ROA目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 製造業 | 約5% | 中小企業実態基本調査 |
| 情報通信業 | 約6% | 中小企業実態基本調査 |
| 卸売業 | 約4% | 中小企業実態基本調査 |
| 小売業 | 約4% | 中小企業実態基本調査 |
売上債権回転率
計算式
※売上債権は期首と期末の平均値を使うのが望ましいです。
使い所・目的
売上高が売上債権(売掛金・受取手形)の何倍あるかを示し、代金回収の効率性を測ります。回転率が高いほど、売上債権の回収が速やかに行われていることを意味します。
解釈上の注意点
「売上債権回転期間」とセットで見るのが一般的です。回転率が高い(回転期間が短い)ほど資金効率は良いですが、厳しすぎる回収条件が販売機会の損失につながっていないか注意も必要です。
業種別目安(売上債権回転期間)
回転率そのものより、回収にかかる日数(回転期間)で比較するのが一般的です。既存の「売上債権回転期間」カードの目安をご参照ください。
有形固定資産回転率
計算式
使い所・目的
土地、建物、機械などの有形固定資産をどれだけ効率的に活用して売上を生み出しているかを示します。特に設備投資の大きい製造業や運輸業などで、設備の稼働効率を評価する重要な指標です。
解釈上の注意点
高いほど、少ない設備で多くの売上を上げていることを意味します。ただし、老朽化した設備を更新せずに使い続けている場合も高く出るため、設備の状況と合わせて判断する必要があります。
業種別目安(回)
| 業種 | 目安値(回) | 出典 |
|---|---|---|
| 製造業 | 約3.0回 | 経済産業省 企業活動基本調査 |
| 卸売業 | 約23.0回 | 経済産業省 企業活動基本調査 |
| 小売業 | 約9.0回 | 経済産業省 企業活動基本調査 |
| 情報通信業 | 約2.7回 | 経済産業省 企業活動基本調査 |
計算式
使い所・目的
企業が生み出した付加価値のうち、どれだけが人件費として従業員に分配されたかを示す指標です。企業の収益構造や、従業員への還元姿勢を評価します。
解釈上の注意点
低いほど企業の資本蓄積や株主への配当余力が大きいことを意味しますが、低すぎると従業員の士気低下を招く恐れがあります。逆に高い場合は、収益性が人件費に圧迫されている可能性があります。
業種別目安
| 業種 | 目安値 | 出典 |
|---|---|---|
| 製造業 | 約50% | 財務省 法人企業統計調査 |
| 情報通信業 | 約55% | 財務省 法人企業統計調査 |
| 卸売・小売業 | 約48% | 財務省 法人企業統計調査 |
| サービス業 | 約58% | 財務省 法人企業統計調査 |
| 宿泊・飲食業 | 約65% | 財務省 法人企業統計調査 |
経常利益成長率
計算式
使い所・目的
財務活動も含めた企業全体の経常的な利益がどれだけ成長したかを示します。売上高成長率と合わせて見ることで、成長の「質」を評価できます。
解釈上の注意点
売上高が伸びていなくても、コスト削減や財務改善によって利益が成長している場合があります。持続的な成長のためには、売上高の成長と利益の成長がバランスしていることが理想です。
業種別目安
企業の成長ステージや景気動向によって大きく変動するため、明確な目安はありません。一般的に、売上高成長率を上回る利益成長率が望ましいとされます。同業他社や過去のトレンドと比較することが重要です。
総資本成長率
キャッシュフロー対売上高比率
キャッシュフロー対総資産比率
設備投資比率
計算式
使い所・目的
本業で稼いだ現金のうち、どれだけを将来のための設備投資に振り向けているかを示します。企業の成長意欲や事業維持・拡大への姿勢を評価します。
解釈上の注意点
100%未満であれば、稼いだ現金の範囲内で投資を行っている健全な状態です。成長期の企業では100%を超えることもありますが、これが続くと財務を圧迫する可能性があります。逆に成熟企業でこの比率が低すぎる場合は、将来の競争力低下が懸念されます。
業種別目安
企業の成長ステージに依存するため一概には言えませんが、「設備投資額が減価償却費の範囲内に収まっているか」が一つの見方です。これを「設備投資対減価償却費比率」といい、100%前後が事業維持の目安となります。
フリー・キャッシュ・フロー (FCF)
計算式
使い所・目的
企業が事業活動で生み出した現金から、事業を維持・成長させるための投資を差し引いた後、自由に使える現金のことを指します。株主への配当、借入金の返済、新規事業投資などの原資となり、企業価値評価(DCF法)の基礎となります。
解釈上の注意点
FCFが継続的にプラスであることが、企業価値向上の大前提となります。成長投資を積極的に行っている時期は一時的にマイナスになることもありますが、それが将来のFCF増加に繋がるかが重要です。
業種別目安
FCFは絶対額であり、企業の規模や投資方針によって大きく異なるため、業種別の目安はありません。時系列での推移や、同規模の競合他社との比較が重要となります。
安全余裕率
EPS (1株当たり利益)
計算式
使い所・目的
1株あたりどれだけの利益を生み出したかを示す指標で、企業の収益力を測る基本的な株価指標です。PERの算出基礎となり、株価の妥当性を判断する上で非常に重要です。
解釈上の注意点
EPSが成長している企業は、株主価値を高めていると評価されます。自社株買いを行うと発行済株式総数が減少し、EPSが上昇する効果があります。企業の成長性を見るには、時系列での推移が重要です。
業種別目安
EPSは企業の利益総額と発行済株式数に依存する絶対額のため、業種別の目安はありません。企業の過去の実績や、同業他社のEPSと比較して成長性を評価します。
BPS (1株当たり純資産)
PER (株価収益率)
計算式
使い所・目的
株価が「1株当たり利益」の何倍まで買われているかを示す、最もポピュラーな株価指標です。企業の利益水準に対して株価が割安か割高かを判断するために使われます。
解釈上の注意点
一般的に15倍程度が平均とされますが、業種や成長期待によって大きく異なります。成長性が高いIT企業などは高PERに、安定した成熟企業は低PERになる傾向があります。
業種別傾向
PERは市場の期待を反映するため、固定的な目安はありません。以下は一般的な傾向です。
- 高い傾向: 情報・通信、医薬品、サービス業(成長期待が高い)
- 低い傾向: 銀行、鉄鋼、建設業(成熟産業)
同業他社や、その企業自身の過去のPERレンジと比較することが基本です。
PBR (株価純資産倍率)
計算式
使い所・目的
株価が「1株当たり純資産」の何倍まで買われているかを示す指標です。企業の資産価値に対して株価が割安か割高かを判断するために使われます。
解釈上の注意点
PBRが1倍の場合、株価と企業の解散価値が等しいことを意味します。1倍割れは株価が割安である可能性を示唆しますが、同時に市場がその企業の将来性や収益性を低く評価している可能性もあります。ROEとPBRには「PBR = ROE × PER」という関係があり、合わせて分析することが重要です。
業種別目安
東京証券取引所がPBR1倍割れの企業に改善を要請するなど、1倍が重要な節目とされますが、これも業種によって水準は異なります。
| 業種 | 平均PBR(参考) |
|---|---|
| 全業種平均 | 約1.2倍~1.5倍 |
| 情報・通信 | 2.0倍以上 |
| 銀行業 | 0.5倍前後 |
計算式
使い所・目的
株価に対する年間配当金の割合を示します。株式投資におけるインカムゲイン(配当収入)を測る指標として、特に高配当株投資で重視されます。
解釈上の注意点
株価が下落すると利回りは上昇するため、高利回りだけで投資判断をするのは危険です。業績が悪化して株価が下がっている可能性もあります。企業の配当方針や業績の安定性を確認することが不可欠です。
業種別目安
市場全体の平均は2%前後とされますが、これも変動します。3%を超えると「高配当」と見なされることが多いです。成熟産業(銀行、商社、通信など)は利回りが高い傾向にあります。
配当性向
計算式
使い所・目的
企業が稼いだ利益のうち、どれだけを株主への配当に回したかを示す指標です。企業の株主還元に対する姿勢を評価します。
解釈上の注意点
成長期の企業は内部留保を優先するため配当性向は低く、成熟企業は高くなる傾向があります。100%を超えている場合は、利益以上に配当を出している(タコ足配当)状態で、持続可能性に疑問符がつきます。
業種別目安
日本企業では30%~40%を目標とする企業が多いです。欧米企業ではより高い傾向があります。企業の配当方針(DOE採用など)によっても変わるため、個別企業の目標値を確認することが重要です。
【実務ガイド】業界別指標実装優先度マトリックス
製造業・重工業
最優先: EBITDA、ROIC、インタレスト・カバレッジ・レシオ
理由: 設備投資が大きく減価償却の影響大、資本効率と債務償還能力が重要
IT・SaaS・ソフトウェア業
最優先: Rule of 40、EBITDA、営業レバレッジ
理由: 成長と収益のバランス、スケールメリットの測定が事業の核心
小売業・EC事業
最優先: 正味運転資本、営業レバレッジ、ROIC
理由: 在庫管理と資金効率、店舗・物流への投資効率が競争力を決定
建設業・不動産業
最優先: 正味運転資本、インタレスト・カバレッジ・レシオ、Altman Z-Score
理由: プロジェクト資金管理、借入依存度の高さ、景気循環リスクの管理
金融業・保険業
最優先: インタレスト・カバレッジ・レシオ、Altman Z-Score、ROIC
理由: 信用リスク管理、規制資本の効率運用が事業の根幹